呼吸器グループ
手術の対象となる多汗症に、特発性の限局性多汗症があります。様々な診断基準がありますが、特に原因がなく限局的(手掌など)に過剰な発汗が6ヶ月以上認められ、<①25 歳以下で発症している、②左右ともに発汗症状がある、③寝ている間は発汗していない、④1週間に1回以上の発汗症状を認める、⑤家族で同様の症状がある、⑥発汗により日常生活に支障をきたしている>という6 項目のうち、2項目以上該当するものです。
症状は人それぞれであり、その症状に伴う悩みも患者さん毎に異なるため、絶対的な基準はありません。当院では、日本皮膚科学会の治療ガイドラインに従った治療を行います。具体的には、有効とされる皮膚科的治療を行っても改善が少ない20歳以上の患者さんの方で、手術に関する利点欠点について十分に納得された場合のみ、手術療法の適応になり得ると考えています。
多汗症に対しては様々な手術方法がありますが、当科は、「より慎重に」手術を行う方針としています.上記適応にあてはまる方に検査を行って全身麻酔による手術可能と判断された場合に、2泊3日程度の入院で、基本的には片側のみの手術から行います。片側の手術で効果を確認した上で、ご希望があれば、反対側の手術を行います。費用は、日本国内で医療保険がつかえる方であれば1回の入院/手術で15-20万円程度のことが多いですが、状況により異なる場合がありますので詳細は外来時にお問い合わせください。
当科で行っている手術方法は、胸腔鏡下交感神経交通枝切除(選択的交感神経遮断術)です。通常5mm~1cmの3箇所程度の創から行います。一般に行われている交感神経切断術と比較して、交感神経の本幹という太い神経ではなく交通枝という比較的細い枝のみを切ります。この方法は、症状の再発が増加する可能性がありますが、後述する術後の代償性発汗が少なくなる可能性があります。
程度は患者さん毎に差がありますが、術後に下半身や背中、頭部など上肢以外の部分の発汗が増える、代償性発汗が必ず起こります。手術の合併症として、出血、創部の感染、気胸(皮下気腫)、ホルネル症候群(眼瞼下垂、縮瞳、眼窩陥凹)などが起こる可能性があります。加えて、予期しない胸腔内の癒着などがあれば、創の数が増えたり、創が大きくなる可能性があります。それに伴い、術後に創の痛みやしびれなどが長く残る可能性もあります。また上述のように、術後長い間経過してから症状が再発する可能性や、今回の手術で胸腔内の癒着がおこるため、将来の胸腔内手術が難しくなる可能性もあります。
詳細は外来受診時にご説明させていただきます。ただし、他施設で、手術による創が当科より小さく少ない病院や、日帰りで手術を行う病院、あるいは、両側一度に手術を行う病院もありますので、当科受診前に十分ご検討ください。