岡山大学大学院 医歯薬学総合研究科

岡山大学大学院 医歯薬学総合研究科 呼吸器・乳腺内分泌外科(第二外科)

肺移植グループ


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肺移植について - 岡山大学肺移植プログラム

肺移植について

 1998年、岡山大学において日本初の肺移植が成功し、日本における肺移植がスタートしました。
 肺移植(脳死肺移植)は不幸にして脳死状態(回復の見込みのない脳の死)になられた方(ドナー)の尊い遺志による臓器提供に基づく治療です。ドナーの片肺または両肺を、肺の機能が低下した移植を受ける患者さま(レシピエント)の片方または両方の肺と入れ替える方法です。
 岡山大学では1998年以降培った移植施設としての豊富な経験に基づき、①高水準で安定した肺移植診療の継続、②新しい技術や知識の開発、③移植医療の啓発と人材育成をめざしています。

間質性肺炎 63例
肺高血圧症 42例
造血幹細胞移植後肺障害 33例
肺リンパ脈管筋腫症 17例
気管支拡張症 11例
肺気腫 9例
肺移植後移植片慢性機能不全(再移植) 7例
びまん性汎細気管支炎 5例
閉塞性細気管支炎 4例
ランゲルハンス細胞組織球症 2例
嚢胞性肺線維症 4例
その他 5例
合計202例
肺移植に関するご紹介・お問い合わせ

肺移植の効果と問題点

 岡山大学の肺移植プログラムは、1998年の生体部分肺移植の成功、2002年の脳死肺移植の成功に始まりました。病院各部門・関連診療科からの協力体制を有する恵まれた環境が当院の大きな特徴であり、コンスタントに多くの患者さまに治療を提供してまいりました。
 肺移植の成績は国際心肺移植学会のデータによると、手術成功率90%、1年生存率80%、5年生存率60%、10年生存率35 %といわれています。心臓や肝臓、腎臓移植に比べると肺移植後の成績は厳しいものといえますが、移植肺が問題なく機能すれば呼吸の苦しさから解放され、普通の生活を送ることができます。
 岡山大学の肺移植の成績は、5年生存率75%、10年生存率64%(2019年12月現在)であり、国内他施設と同様に良好な結果を残しています。半数以上の方が社会復帰され、充実した人生を楽しまれています。
 一方で、克服しなければならない課題もあります。臓器提供の少ない日本では、移植までに病状が悪化し、移植待機中にお亡くなりになる場合もあります。また肺移植は非常に体に負担の大きい手術であり、移植後の拒絶反応の発症率も他の臓器移植より高く、副作用の多い免疫抑制治療が生涯にわたり必要となります。そのため、呼吸不全でお困りの患者様すべてに肺移植は提供されておらず、慎重に肺移植の適応判定が行われているのが現実です。
 重篤な病状での移植は、患者さまの体力を考えるとぎりぎりの決断といえます。しかし私たちは、救命に加えて日常の生活を取り戻す機会を見逃さず、適応のある患者さまを可能な限り肺移植につなげることをモットーとして誠実に診療に取り組んでいます。

岡山大学における肺移植(脳死肺移植)までの流れ

 重症呼吸器疾患であると診断され(詳しい肺移植適応疾患についてはこちら)、考えられるすべての治療手段がすでに尽くされており、予後がきわめて悲観的で肺移植以外には治療手段がないが、移植により症状の改善が期待できる場合、肺移植を考慮すべき時期であると考えます。まずご本人、ご家族に来院していただき、肺移植医および移植コーディネーターより肺移植についてのご説明をさせていただいております。

検査入院

 肺移植の適応について判断するために、岡山大学に約2週間入院していただき、レントゲン、CT、血液検査、呼吸機能、心臓カテーテル検査などの諸検査を受けていただく必要があります。これらの検査結果に基づき、岡山大学内の肺移植適応判定委員会、さらに全国組織である中央肺移植適応検討会にて審査を受け、「肺移植の適応あり」と認められた場合に、(社)日本臓器移植ネットワークへ肺移植の待機登録を行います。手続き終了後は、脳死ドナーの出現を待ち、肺移植が行われます。現在日本では、脳死ドナーが非常に少なく、数年の待機期間を要しています。

移植待機

 登録手続き終了後は、日本臓器移植ネットワークからの脳死ドナーの斡旋を待ちます。現在日本では、脳死ドナーが非常に少なく、平均的に数年の待機期間を要しています。その間は地元のかかりつけ医の先生に引き続き体調管理を継続していただきます。また当科へもご病状について定期的にご連絡していただいております。ご病状が許せば、年に1度当科外来へお越しいただき、体調の大きな変化がないか確認させていただいております。かかりつけ医の先生には肺移植後の管理もお願いすることになりますので、良好な協力関係を構築しておくことが大切です。

肺移植手術

 脳死ドナーからの臓器提供があると、日本臓器移植ネットワークより血液型、体格、待機時間等を考慮し、公平で且つ最適と思われる移植候補者に連絡が入ります。移植を受ける意思がある場合、直ちに岡山大学に来院して頂きます。これと同時に臓器摘出チームは脳死ドナーのいる病院に向かい、臓器の状態が医学的に移植に適しているか最終判断し、臓器摘出を行います。
 移植を受けられるレシピエントは移植の最終説明の後、全身麻酔の準備に入ります。
 肺移植手術は8-10時間以上かかる大手術で、30人を超えるスタッフにより行われます。両肺移植の場合、まず心臓外科チームにより人工心肺回路が装着されます。これにより肺を摘出しても体に酸素を送ることができるようになるわけです。つづいて呼吸器外科チームにより両肺の摘出が行われます。
 気管支・肺静脈・肺動脈の順で片方ずつ肺の移植を行います。吻合が終わると新しく移植された肺に血液が流れ、移植された肺で呼吸が始まります。その後集中治療室に入ります。

病棟

 集中治療医を中心とした2~4週間の集中治療室での治療を受けた後、病棟の個室に移ります。病棟では主治医・看護師を中心に退院までの回復期をお世話させていただきます。
 10種類前後の大切なお薬をきちんと内服して頂くための薬剤師による服薬指導、栄養サポートチームによる栄養・食事指導が開始されます。移植後は体力や筋力の低下により、自力で体を起こすこともできなくなっていますので、さまざまな種類の理学療法により順調な回復をお手伝いいたします。お薬の副作用はないか、感染症や拒絶反応はないか等、主治医は注意深く検査・治療いたします。順調に回復されれば術後4~6週間で酸素吸入は不用となり、移植後8~12週間以内に日常生活ができるレベルまで回復して退院が可能となります。状況によっては、紹介元の病院へ転院となることもあります。屋外での歩行・リハビリが完了すれば待ちに待った退院です。

退院後

 退院後約1ヶ月間は病院の近くに住んでいただき、毎日リハビリに通院していただきながら、ご自宅で生活が可能であるレベルであることを確認してご自宅に帰っていただくようにしております。
 またその間1~2週間毎に外来にて診察させていただきます。術後2~3ヶ月経過すると、ご自宅へ帰ることができますが、その後も定期的な外来通院は必要です。通常、移植前の地元の主治医の先生にお願いをしております。

<移植後注意していただくこと>

拒絶反応: 免疫抑制剤が生涯必要となります。毎日自分で肺活量を測り、拒絶反応の早期発見に努めます。

感染症: 免疫抑制剤により免疫力が低下しているため感染症に注意が必要です。そのため最初の6ヶ月間は生ものの摂取を控える必要があります。手洗いやうがい、マスク着用などの感染予防が重要となります。

薬の副作用: 免疫抑制剤により腎不全、糖尿病、高脂血症、高血圧、がんなどの合併症を起こすことがあります。

その他: 免疫抑制剤と相性が悪いグレープフルーツ等の柑橘類が食べられなくなります。

 退院後、毎日決められた時間に決められたお薬を内服する必要はありますが、順調にいけば、3ヶ月で日常生活に不自由がなくなり、6ヶ月以内に社会復帰が可能になり、通学やデスクワーク、家事をすることが可能になります。軽いスポーツをすることも可能です。手術前は重度の肺疾患のために苦しんでおられた生活は、すばらしく改善されます。
 どんなに元気になられても、定期的な外来通院をお願いしています。地元の主治医の先生と岡山大学は移植後も連携をとりながら患者さまのフォローを行っています。長期的には免疫抑制剤の量も減っていきますが、定期的な検診は大変重要です。

肺移植の適応基準・疾患

Ⅰ. 肺移植の適応基準

  • 治療に反応しない慢性進行性肺疾患で、肺以外に患者の生命を救う有効な治療手段が他にない
  • 移植医療を行わなければ、残存余命が限定されると臨床医学的に判断される
  • レシピエントの年齢が、原則として、両肺移植の場合55才未満、片肺移植の場合には60歳未満である
  • レシピエントが精神的に安定しており、移植医療の必要性を認識し、これに対して積極的態度を示すとともに、家族および患者を取り巻く環境に充分な協力体制が期待できる
  • レシピエント症例が移植手術後の定期的検査と、それに基づく免疫抑制療法の必要性を理解でき、心理学的・身体的に充分耐えられる

Ⅱ. 適応となりうる疾患

  • 特発性間質性肺炎(特発性肺線維症)、その他の間質性肺炎
  • 肺気腫、α1アンチトリプシン欠損型肺気腫症、肺リンパ脈管筋腫症、閉塞性細気管支炎
  • 造血幹細胞移植後肺障害:閉塞性GVHD、拘束性GVHD
  • 肺移植後移植片慢性機能不全(CLAD)
  • 気管支拡張症、びまん性汎細気管支炎、嚢胞性肺繊維症
  • 肺高血圧症:原発性肺高血圧症、アイゼンメンジャー症候群、慢性血栓塞栓性肺高血圧症、多発性肺動静脈瘻
  • 肺サルコイドーシス、肺好酸球性肉芽腫症、じん肺
  • その他、肺・心肺移植関連学会協議会で承認する進行性肺疾患

Ⅲ.除外条件

  • 肺外に活動性の感染巣が存在する
  • 他の重要臓器に進行した不可逆的障害が存在する
    悪性疾患、骨髄疾患、冠動脈疾患、高度胸郭変形症、筋・神経疾患、肝疾患(T-bil > 2.5mg/dl)、腎疾患(Cr > 1.5mg/dl, Ccr < 50ml/min)
  • きわめて悪化した栄養状態
  • 最近まで喫煙していた症例
  • 極端な肥満
  • リハビリテーションが行えない、またはその能力が期待できない症例
  • 精神社会生活上に重要な障害の存在
  • アルコールを含む薬物依存症の存在
  • 本人および家族の理解と協力が得られない
  • 有効な治療法のない各種出血性疾患及び凝固異常
  • 胸膜に広範な癒着や瘢痕の存在
  • HIV (human immunodeficiency virus)抗体陽性

肺移植ご連絡のタイミングとご紹介時検査項目

I.ご連絡のタイミング

  • NYHA:Class III 以上
  • HOT(在宅酸素療法)導入後
※肺移植の相談に関してはより早期が望ましいとされています。上記以外(以前)の状態でも随時ご相談ください。

II.一般的な適応基準(めやす)

拘束性肺疾患(間質性肺炎など)

  • 努力性肺活量<80%,DLCO<40%程度で,労作時にSpO2<88%など呼吸機能低下が進行している,など

閉塞性肺疾患(肺気腫など)

  • 1秒量<25%程度で,活動性の低下(BODE index7以上)や,繰り返す急性増悪を認める,など

感染性肺疾患(嚢胞性線維症,びまん性汎細気管支炎など)

  • 1秒量<30%程度で,急速な呼吸機能低下があったり,頻回の入院が必要,など

肺血管疾患(肺高血圧症など)

  • 循環器内科専門医により肺移植が必要と判断されている

Ⅲ.ご紹介時に可能であれば添付していただきたい患者様情報

  • 患者様名、生年月日、当院への受診歴の有無(カルテ番号作成に必要です)
  • 血液型
  • 身長、体重
  • 現在のADL(ベッド上、自宅内、就労・通学可能など)
  • 服薬状況
  • ご家族構成
  • 以下の検査結果情報(経時的な変化のわかるものがあれば複数お送りください)
    • 1)胸部X線
    • 2)胸部・腹部CT
    • 3)肺機能検査
    • 4)血液ガス
    • 5)喀痰培養・感受性検査
    • 6)血液・尿一般検査(一般感染症含む)
    • 7)心エコー・心電図
    • 8)病理学的検査(施行されていれば)
    • 9)心臓カテーテル検査(施行されていれば)

肺移植にかかる費用

肺移植は保険適応になり、移植を受けられる方の経済的負担は大幅に軽減されています。
 それぞれの負担割合、また特定疾患認定をお持ちの方等個人差はありますが、高額療養費の対象となりますので、高額療養費限度額支給によって窓口負担を軽減させることができます。保険事務所や市町村窓口で、事前に手続きを行われることをお勧めいたします。
 また脳死肺移植の場合、(社)日本臓器移植ネットワークへ登録時に30,000円の登録料が必要です。登録更新料は年間5,000円です。脳死肺移植が成立した場合には臓器斡旋料100,000円をネットワークに支払います(ただしこれらネットワークへの費用は非課税世帯では免除となります。非課税証明書が必要です)。

移植コーディネーター

 移植コーディネーターとは、肺移植を受けられる患者さまと、移植チームの橋渡しをする、移植医療の調整役です。肺移植を希望する患者さまや、移植待機中の患者さまの相談に応じたり、移植を受けられた患者さまが退院したあとも、日常生活の相談や、健康管理のお手伝いをしたりしています。
 肺移植に関する疑問や質問など、お気軽にお問い合わせください。

肺移植のご紹介に関するお問い合わせ

086-235-7265(医局直通)
086-235-7269

〒700-8558 岡山県岡山市北区鹿田町2-5-1
岡山大学医歯薬学総合研究科呼吸器・乳腺内分泌外科

■豊岡 伸一(呼吸器・乳腺内分泌外科学 教授)

haiishoku@okayama‐u.ac.jp

肺移植後のことに関するお問い合わせ

086-235-6965
086-235-7631

岡山大学臓器移植医療センター

■臓器移植コーディネーター

colungtx@okayama-u.ac.jp